大阪高等裁判所 昭和45年(ネ)549号 判決 1971年5月31日
主文
本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
控訴人らは、「原判決を取消す。被控訴人は控訴人森田全紀、同森田富子、同森田裕子に対してそれぞれ金六一八、〇〇〇円および内金五六八、〇〇〇円に対する昭和四一年九月八日から支払ずみまで年五分の割合の金員、控訴人森田芳野に対して金一、一六四、〇〇〇円および内金一、〇六四、〇〇〇円に対する昭和四一年九月八日から支払すみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、被控訴人は、主文と同趣旨の判決ならびに敗訴の場合には担保を条件とする仮執行免脱の宣言を求めた。
当事者双方の事実に関する主張および立証の関係は、つぎに訂正、挿入、付加するほかは、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
(訂正挿入)
(1) 原判決六枚目裏六行目の「提野組」を「堤野組」と訂正する。
(2) 同八枚目裏四行目の「(第一回)」を「(第二回)」と訂正する。
(3) 同八枚目裏末行の末尾に「検乙第一号証は昭和四一年九月二日、堤野千太郎が現場を南から北へ撮影した写真であり、同第二号証は同日、同人が現場を北から南へ撮影した写真である。」を挿入する。
(4) 同九枚目表二行目の「(第二回)」を「(第一回)」と訂正する。
(付加)
控訴人らは、当審における証人仲谷真三、同奥洞正博の各証言を援用した。
理由
当裁判所も、控訴人らの請求は理由がないと判断するが、その理由は、つぎに訂正付加するほかは、原判決九枚目表六行目から同一一枚目表一一行目まで記載の判断、説示と同一であるから、これを引用する。
(1) 原判決九枚目表六行目の「被告が」のつぎに「控訴人ら主張の道路の管理者であり、」を挿入する。
(2) 同九枚目裏二行目の「第一八号証、乙第三、」を「第一七、第一八号証、乙第三、第四、」と訂正する。
(3) 同九枚目裏三行目を「仲谷真三(原審第一、二回分)、奥洞正博(原審分)、鈴木要、西岡弘、杉平脩子、田村秋子、小川定雄、堤野千太郎(第一回)、福田隆好、福本芳実の各証言に弁論の全趣旨を総合す」と訂正する。
(4) 同九枚目裏六行目の「四六・五米」を「四五米」と訂正する。
(5) 同一〇枚目表二行目の冒頭の「に」のつぎに「工事標識板および」を挿入する。
(6) 同一〇枚目表六行目の「されていた」のつぎに「工事標識板、」を挿入する。
(7) 同一〇枚目表一〇行目の「九時」のつぎに「過頃」を挿入する。
(8) 同一一枚目表七行目末尾に「右事故直後、仲谷真三の血液によりアルコール分の検査をしたところ、血中アルコールは、血液一ミリリツトル中に〇・九八五一ミリグラム含まれていた(乙第一二号証)。」を付加する。
(9) 同一一枚目八行目から一一行目までを「以上の事実が認められる。〔証拠略〕は、前掲各証拠に照らして採用できず、ほかに右認定を覆えすに足る証拠はない。」と訂正する。
前記当事者間に争いのない事実および右認定事実に基づいて、本件事故の原因について考えると、本件事故は、(1)本件事故直前に本件事故現場を北進した第三者の車によつて、工事標識板、バリケード、赤色燈標柱が倒されたため、通常人でさえ工事現場であることを識別しにくい状態であつたところに、(2)、飲酒し、かなり判断力、行動力がにぶくなつていた仲谷真三が、対向車とすれ違うために前照灯を下向きにして進んで来たため、本件工事現場を発見することが遅れ、(3)、しかもブレーキをかけずにハンドル操作だけで避けようとしたために生じたものといわざるを得ない。被控訴人は、本件工事現場に工事標識板、バリケード、赤色燈標柱を設置し、工事中で通行できないことを表示していたのであり、右(1)ないし(3)の原因がなければ、本件事故は発生していなかつたものと認められる。「前記認定のとおり、直線、平坦な道路で、工事標識板、バリケード、赤色灯標柱が、第三者によつて倒されたまま放置されることは、被控訴人において予期し得ないことであり、しかも本件では、右工事標識板等が倒されたことが、本件事故の直前であることを考えると、本件事故については、被控訴人において、道路の管理の瑕疵があつたとは認められない。また、道路の設置に瑕疵があり、それが本件事故の原因となつたことについては立証がない。
以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、控訴人らの請求が理由のないことは明らかであり、従つて、これらを棄却した原判決は正当であるから、本件控訴をいずれも棄却することとし、控訴費用については、民訴法八九条、九三条一項本文、九五条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判官 入江菊之助 中村三郎 道下徹)